ハスラー、プレイヤー、ヴァイリンガル、ギャングスタ、etc...HIPHOPの世界において、MCにまつわる派手な出自を象徴する枕詞は数あれど、ソロ・マイカー、JABとはそうした、ある意味ではHIPHOP的に恵まれたセンセーショナルなフレーズとは一切無縁の、日々のアルバイトで携帯、公共料金の支払いに追われつつ、週末には場末の酒場で気のおけない仲間たちと乾杯してストレスを発散するような、この国のどこにでもあるような風景、日常を歩んできた若者だといえるだろう。
しかし彼がそんな平凡な日々の中で唯一、譲れない美学としてひたむきに捧げてきたマイク稼業への情熱は、前述のような枕詞などなくとも、彼に飾らない等身大の目線からの悩み、葛藤、希望、それら全てを飲み込んで逞しく産声を上げる、彼の代名詞でもある「どぶねずみ」さながらの泥臭いリリシズムと、盟友TSUKI Recordings.手がけるサンプリング・ビート上で黒光りする、耳の肥えたHIPHOPリスナーの多くが一目置く、職人肌のフロウをもたらした。
2008年、それまでの寡作ながら、着実にヘッズたちの記憶に残る「月間ラップ」(Da.Me Records)への音源提供をはじめとする、しぶとい活動の集大成としてリリースされた快作"Scenery from here EP"、 更には親交深い東のリリシスト、EI-ONEと自らのクルー、高槻POSSEによる共同名義でのアナログ・リリースなどヘッズの信用に値する幾多のアクションを経て、満を持してファースト・フル・アルバムとして完成した本作の中にあるのは、薫り高いシャンパンではなく、熟成された焼酎の如くアクの強い異臭を放ちながらも、味わい深い言霊の数々、地下で深く繋がった人脈から選りすぐられた珠玉のトラック群、更には大阪シーンに根を張るSTUDIO COSMIC NOTESの仕掛けるマジック、それら全てが渾然一体となって奏でる極上のブルースだ。
層の厚い関西HIPHOPシーンの中にあっても一際ユニークな、アルコールにまみれた独特の磁場が形成された街、高槻の街角を鮮やかに切り取った本作は、特殊なバック・グラウンド、物語性などなくとも、揺るぎない信念と音楽への真摯な姿勢、そして豊かな才能を持った同志たちとの切磋琢磨のみによって、彼らだけのドラマ、言い換えれば極上の泥臭いHIPHOPが生まれ得ることを証明してくれるはずだ。
浦田 威(ライター) PROFILE :JAB 特殊なhighな土地、大阪/高槻市で育ち現在も生活し活動の拠点としている。
時に痛々しいほど辛辣に、時に驚くほど深い愛に満ちた人間味とリアリティ溢れるありのままのスタンスで地元高槻を熱くする。
第四土曜の主催イベントTSUKI(@高槻RUSH, DELTA, DUKE BAR) を中心に各地で土臭く熱いLIVEを展開。
関西だけに留まらない現場でのLIVEは勿論、音源制作も積極的に行い無料配布DEMO CD[直視]、[どぶねずみZM]を各500枚バラ撒き、惜しまれつつも廃刊となったHIPHOP専門誌blastのDEMOコーナーにも掲載される。
Da.Me.Records発信のコンピレーションCD[月刊ラップ]シリーズにどぶねずみ名義での単独楽曲やマイクリレーでの参加を経て、2007年に迷友DJ YONE with JAB名義で自身の楽曲を盛り込んだMIX CD[Sunday Carpenters]をTSUKI Recordings.からリリース。
2008年6月に、これまでとこれからの活動を結び付ける制作環境を核に、TSUKI Recordings.プロデュースによる自主制作音源[Scenery from here EP]をストリート流通でリリース。
その後、親交深い東のリリシスト: EI-ONEと自らのクルー: 高槻POSSEによる共同名義でのアナログ・リリースや、大阪シーンに根を張るSTUDIO COSMIC NOTESによるコンピレーションアルバムへの楽曲提供などヘッズの信用に値する幾多のアクションを経て、満を持してファースト・フル・アルバム[Standard Process](2010年2月発売予定)を完成させる。
1. Dear My Life Color 2. Local Hip Hop 3. We Gotta Go/どぶねずみ 4. なるようになるでしょ 5. Challenge 6. The One (feat. Toki, Kn-Sun) 7. How to Learn 8. Standard Process 9. I Think .... 10. Rock The Bells/高槻Posse 11. 独り言 12. Skit 13. 雨男の唄 (feat. Atius) 14. 重ね重ね